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【1】「官」の用語を排除せよ(2/3)
                  相続支援ネット顧問 森田義男

前回のコラムでお示ししたとおり、私は「官」という用語が大嫌いです。
しかしマスコミはやたらと「官」を使います。それは役所・権力におもねて
いるとしか思えません。そもそも「官僚」は法律用語にはないはずです。

常に正確な用語を使用すべく努めているマスコミ(とりわけNHK)は、国
家公務員という用語を使わなければならないはずです。

たとえば民間人が職場を去れば退職です。しかしそれが役人であれば、ほと
んどの場合に退官といいます。なぜ退職ではいけないのでしょうか。昔は刑
務所の勤務員を看守といっていましたが、約20年前頃から刑務官と言い出し
ました。

裁判所の判事という職責に官を付して裁判官というのは分かります。彼らは
偉いとされているのですから。しかし単なる事務員や書記にすぎない者を、
事務官だ書記官だなどとおだてます。だから彼らは勘違いして威張り散らす
のでしょう。

確かに組織内部の職制(官職)上は事務官・書記官なのでしょう(役所は何
でもかんでも官を付けたがります)。しかし外からみれば彼らは裁判所職員
です。

それは選挙における候補者の職業欄の表示をみれば分かります。例えばそれ
は○○省職員であり、○○省調査官ではありません。これはいわゆるキャリ
アであれ何であれ同じことです。彼らの職業・地位が国家公務員である以上、
これが当然の表示となるわけです。

いうまでもなく官尊民卑など絶対に許してはなりません。まあ公僕(パブ
リックサーバント)とまでは言いませんが、両者はあくまで対等の関係のは
ずです。しかし「官」を名乗らせると、偉くなったと勘違いさせてしまいま
す。また一般人も何となく気押されます。

民間と役所が共同で事に当たるときは、必ず「官民あげて取り組む」といい
ます。いかにも「下々の要請に応えて、お上がこれに協力してやっている」
といったイメージです。最近では単なる公務員であるはずのものを、「行政
官」などとおどろおどろしく言い始めたようです。一体何様のつもりなので
しょう。

「官」は、国と地方との関係においても由々しいものとしています。実は
「官」の字は、地方公務員は使用することができません。

しかし「カン」の響きがあまりにいいものですから、やたら違う字を当てて
自らを慰めています。例えば○○主幹といった形です。主幹には、主管とか
主監といった字を使って区別をしたりしています。その対応ぶりにはいじら
しさすら感じます。

固定資産税は市町村の基幹業務です。そして各市町村には必ず1人の固定資
産評価額を決定する責任者がいます。たいてい総務部長とか助役とか偉い人
がなるのですが、地方税法はこの人を「固定資産評価員」といいます。また
建築確認申請を受理・判断する責任者(これも偉い人です)は「建築主事」
です。固定資産評価官や建築官を名乗れないのです。

私が小学生の頃、小学校の庶務のおじさんを「小使いさん」と呼んでいまし
たが、それでは失礼というので「用務員さん」なりました。その後それも具
合が悪いというので「主事さん」になったそうです(これも昔の話で、今は
何と呼んでいるかは存じません)。いずれにしても固定資産評価員や建築主
事は、昔の「小使いさん」なみの名前に過ぎないわけです。ちなみにこうし
た上下関係植え付けるような名称は、法案を作成する中央省庁の役人が採用
しています。

むかし私の高校の先生が言っていました。「私の職業に対しては教師、教員、
教諭といったいろいろの表現がある。しかし私の一番好きな名前は教官であ
る」。その気持ちはよく分かります。しかし残念でした。私の通った学校は
都立高校ですから教官を名乗ることはできません。
 
官公庁という用語があります。これは国の役所を官、県や市の役所を公と称
しているとのことです。国公立大学という表現も同じです。つまり国の役人
が両者の区別(まあ差別とまではいいませんが)にいそしんでいるわけです。

しかし本来これに協力すべきマスコミは、時として地方にも官を使います。
これも旧聞に属しますが、国の役人が地方へ出向いたとき地方公務員がこれ
を接待することを称して、「官官接待」といいました。国側は「失礼な、官
公接待というべきではないのか」と思ったかもしれません。

また民間と地方自治体が協力して事に当たるに際して、マスコミは「官民あ
げて」といいます。これは「公民あげて」のはずです。

地方が「官」を使用できないと同じ意味からなのか、民間も「官」の使用を
控えています。私の知る限り例外は二つ。指揮官と面接官です。前者は野球
とかサッカーの監督を称しての表現です。また後者は正社員採用における適
否を判断する人をいいます。

つまり両者とも、絶対的な判断力を委ねられた人という意味です。「官」は
こうした人に限って使用します。いかに一般社会がこれに重みを感じている
かが分かろうというものです。

以上のとおり「官」は官尊民卑と、国・地方の上下関係とを著しく助長する
用語です。したがって「官」は最大の差別語として、使用を禁止するべきで
あると考えます(国家公務員法は改正)。

そして役所をひと言で表現する場合には「公」を、役人・公務員を表すには
「員」を使用すればいいと思います(「員」が安っぽいと思えば、民間と同
じく「者」「役」でもいいとしましょう)。ただし使用禁止の大例外として
裁判官、検察官、外交官、警察官、自衛官くらいまでは認めてもいい(登記
官までいくと不可)ようには思いますが...。

以下次号

『新:相続のプロ集団!相続FP登場』メールマガジン Vol.9 (2010.6.9)より

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