不要高額評価の背景(2)力量不足評価
まずは評価規定を知らないことによる不要高額評価です。
近年、土地価格に大きな影響を与える行政法規の内容が、相続税評価の規定に取り込まれてきました。セットバック、都市計画道路予定地、複数の容積率、開発行為、敷地の接道義務等々。前章で大きく取り上げた広大地に関する開発行為はその最たるものです。
しかしこれらの評価規定の真の理解には、背景となる不動産の知識・実力が必須となります。これがなければ、改正当時にはとりあえず勉強するとしても完全な理解は困難です。であれば忘れやすくもなりましょう。
何より規定自体は記憶していても、その土地がその規定に該当していることに気づきません。その土地にはどの評価規定が適用できるかは、土地を見る力がなければどうにもならないからです。こうした「見て判断する」という技量がなければ、すぐに不要高額評価につながってしまします。
もうひとつ、測量面での力量の不足もその原因となります。たとえば図表6-1のように、一画地上に何軒もの貸家がある場合です。この場合評価規定では、評価単位を貸家の敷地ごとに細分化した上で評価せよと定められています。細分化すれば奥の敷地の地形がくずれ、評価額は一体評価するよりかなり下がります。これは歓迎すべき規定なのです。
図表6-1: 歩測による現状図作成
A:住宅地図が示す貸宅地の状況
B:公図(評価対象地が1筆)
C:筆者が歩測等により作成した現況図
大阪府守口市の全く分筆されていない土地。21区画(20軒と道路)の底地すなわち貸宅地です。
この相続を担当した筆者は、歩測とメジャーで現況図を作成し、それを基に各土地を評価しました。
したがってこのような場合には、評価単位ごとの分割図面を作ることにより評価額を下げる必要があります。作成方法は工夫します。たとえば公図や住宅地図を基に歩測により概略図をつくるとか、役所の水道管配置図面を引っ張り出して三角スケールで面積按分するとか、いよいよダメなら専門家に簡易な現況測量を依頼するといったところです。
しかし不動産が不得手であれば、これらの作業は困難となりましょう。したがって多くの場合、細分化をしないままこれを一体評価しているようです。このような評価単位の区分を要する場合は、かなり多いにもかかわらずです。
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