広大地地主の節税対策
とはいえ、できてしまった規定を批判してみてもどうにもなりません。そこで以下に、この規定に対して納税者側は具体的にどのように対処すべきかを考えてみましょう。
それにはまずこの規定を読み込み、さらに対象地及びその周辺の土地の利用状況等をじっくり調査することにより、規定適用の可否を判断する必要があります。その上で適用可能と判断したのであれば堂々と適用すべきです。そしてその際には、その判断根拠を詳細に記した書面を申告書に添付するという工夫も必要になりましょう。これは税務署員の否認の動きを封じる効果があります。とにかく必要以上にビビってはなりません。これをやると先方の思惑にはまってしまいます。
以上が、どう対応するかの原則論です。次に具体論を少し述べておきます。
たとえば図表5-12の土地であれば広大地の適用が受けられますが、この庭にアパートを建てれば、評価単位(土地評価を行うに当たっての画地の単位。土地の面積もこの評価単位ごとで測ります)は2つになってしまい、いずれも500・を下回り広大地ではなくなります。つまりうっかり評価単位を細分化するわけにはいかないのです。
図表5-12: 庭先へのアパート建築
アパート建築は相続税対策の定番ですが、これをすることによりうっかり評価単位を分割すると、せっかくの広大地の適用が吹き飛んでしまいます。
ただしこの場合、アパートの建物名義が子供等他の人であれば、土地はその人に無償で貸す(これを使用貸借といいます)ことになります。そしてこうした使用貸借の土地は一体で評価されることとされており、両地は一体化されめでたく広大地となります。したがって土地の一部に既存の貸家等がある場合には、これを家族名義に変更(売買等)して敷地を使用貸借とすれば、この土地を広大地とすることができるわけです。以上のとおり、広大地対策には評価単位の工夫が有効である場合が少なくありません。
一般の広大地の場合には、とにかく大きな建物をドカンと建ててはなりません。貸家であれば、中規模の鉄骨2階建て程度のものを敷地の端に建て、敷地の多くを駐車場にする(一部は入居者以外の人用も)等が無難でしょう。3階建て以上のマンションが敷地の一部に建っているのであれば、簡易な塀等で敷地を区分し、それ以外の土地を広大地に持ち込みたいところです。
今度は、築後相応の期間を経過している賃貸建物を大々的に建ててしまってい場合です。であれば建物取り壊しを検討すべきでしょう。むろん撤去すれば広大地となるからです。また立ち退き作業の途中に相続が発生した場合であれば、この土地が有効利用に供されているとはいえないはずです。したがってこの場合には、当然に広大地補正の適用が可能となりましょう。
相続税を減らす不動産相続の極意 不動産の相続対策
相続に関する多くの誤解が解け、「円満かつ資産を守る相続税対策」の本質が見えてきます。
相続力
平成23年度税制改正大綱に対応!経験豊富な相続税専門の税理士が、相続にまつわる家族の円満から、不動産評価の実態、税務調査まで、本音で語る相続力アップの本。本当は、相続関係のプロには読ませたくない、上級テクニックを披露。
取り返せ!相続税
相続時の注意点から、知っておきたい節税手法、土地の時価評価のしくみ、そして税理士の選定方法まで徹底解説。
裁判所の大堕落
冤罪を続発させ役人のいいなりになる腐敗組織。
役所の腐敗や次々に起こる冤罪は、裁判所の劣化・堕落が原因だ!
はじめての不動産実務入門
不動産の見方、評価の仕方が面白く身につく!実例写真、オリジナルなグラフや図表、わかりやすい解説で理解度100%。
公示価格の破綻
実勢価格との乖離、「選定替え」という不自然な操作など、迷走を続けてきた「土地取引価格の指標」はついに破綻。
新・間違いだらけの土地評価
先入観念や誤解に支配されている不動産に関する一般の認識を是正。土地の評価方法、土地の時価等を解説。
新・嘆きの固定資産税物語
反響をよんだ前著から4年。この間の動きを加え、路線価の評価制度や税制について、新たに分析、批判を試みる。
新・怒りの路線価物語
固定資産税制度を痛烈に批判した「嘆きの固定資産税物語」に3年間の事態の進展を追加した最新版。
まちがいだらけの土地評価
自然体で地に足の着いた発想と考え方で、土地の評価方法、土地の時価等を解説。不動産の姿を冷静に見つめ直す。