不整形地補正率
最も重要な評価要素である面積の点は、第3節で少し詳しく述べることとして、最初は、理屈抜きに視覚的に理解できる不整形地補正率から入ります。
不整形地補正率とは、地形が整形な土地に比べ変形になっていることに関しての減額割合をいいます。そして制度発足当初から長年、この不整形地補正は「30%の範囲内で適宜減額する」とされていました。 つまり最大の減額幅は30%止まり。どんなに地形が悪くとも3割以上下げてはならないというのです。
既にお分かりのとおり、地形が少しでも悪ければ2~3割はすぐ下がります。半値以下となるものを含め、(どこかの電気屋さんのコマーシャルのように)「3割、4割引は当たり前」の不整形地の実態からして、全くの現実離れの規定。まさに絵に描いたような「怠慢評価」です(図表4-1)。
ところが、「この方式は達観での判断(要するにエイヤッ)に頼らざるをえず、それでは人により差が生じ好ましくない」といったことから、当局は平成10年からこの「達観方式」を廃し、陰地割合方式に一本化しました。
これを図表5-2に示す不整形地で説明します。まず正面路線をベースに対象地全体を囲む長方形を想定し(これを想定整形地といいます)、対象地に含まれない想定整形地部分を蔭地とします。次に想定整形地に対する蔭地部分の割合(蔭地割合)を算出します(なお間口が狭い場合は間口狭小率を乗じる等により、減額率はより大きくなる)。
図表5-2: 不整形地補正の計算
最後に、対象地の面積に応じてA,B,Cの3つに区分した上で、蔭地割合の大きさに応じて定められた図表5-3の不整形地補正率表から、対象地に適用すべき補正率を求めます。なお面積の3区分は、面積の広い土地ほど地形の劣ることのダメージは少ない点を根拠としています。また不整形地補正率は、土地の利用区分ごとに定められています。(図表5-2は普通住宅地区を対象とするもの)。
図表5-3: 不整形地補正率表(普通住宅地区)
蔭地割合/地積区分 | A | B | C |
---|---|---|---|
10%以上 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
15%以上 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
20%以上 | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
25%以上 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
30%以上 | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
35%以上 | 0.88 | 0.91 | 0.94 |
40%以上 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
45%以上 | 0.82 | 0.85 | 0.90 |
50%以上 | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
55%以上 | 0.75 | 0.78 | 0.83 |
60%以上 | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
65%以上 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
さて、この補正率表からお分かりのように、減額の最大は40%止まり。しかもこれが適用されるのはごく限られた土地に過ぎません。
見てお分かりのとおり、この陰地割合方式はお話になりません。実は当局がこの方式を最初(平成4年)に示した文書の冒頭に、減額割合を4%とする図表5-4の評価事例を示していまする。3割は優に下がるであろうこの土地の「4%引き」を見ただけで新方式のデタラメぶりが分かろうというもの。一体これを作った「霞ヶ関のお利口さん」は、「最初にこんな評価事例を載せたら具合が悪いのではないか」などとは考えないのでしょうか。
図表5-4: 国税当局のでたらめ評価事例:不整形地の例示
その大なる理由は、新規定でも最大の減額幅を実質的に3割(4割減の適用は大例外)に抑えている点にあります。逆転評価が頻発しているこの時期に、この程度の認識。路線価が時価並水準になっている今日にも、「怠慢評価」は続いているのです。 そもそも評価は達観で行うものです。土地の不整形の状況が、このような数値ではかれるわけがありません。そこで最後に図表5-5にこの方式の致命的な非論理性を指摘しておきます。
図表5-5: 不整形地評価における決定的な矛盾
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