時価を左右する個別的要因(5)借地権・底地
借地権とは、「建物所有を目的とする土地の賃借権(または地上権)」です。賃借人がそこに建物を建てる以上、借地期間は20年とか30年といった長期のものになりますが、契約期間が満了すれば土地は地主に返すこととなるはずです。
しかし借地法が、特殊事情(戦争遂行のため等)により「事実上は期限が来ても土地を返す必要がない」と定めてしまいました。さらにその後も借地人を保護する運用がなされました。さらに何やかにやの事情で、地代水準も極めて低い水準に抑えられています(今日の地代も、その土地の固定資産税の2~3倍程度です)。
その結果、借地人の側には「安い地代で超長期間この土地を使用できる」という経済的利益が自然発生しました。事実これは取引市場で売買の対象にもされます。
そうであれば逆に、借地権の付いた地主が有する土地(これを一般に底地といいます)の経済価値はガタ落ちとなります。地代は極めて安い上に借地期限になっても返してもらえません。おまけに固定資産税はまともに取られます。だからこれを売りに出しても一般には誰も買いません。
とはいえ借地権者もそう安泰ではありません。長い借地期間には更新料や各種の承諾料の支払いを要することもあります。また借地権は担保になりにくローンが受けられない可能性もあります。
つまり底地と借地権の市場価格を合計しても、その土地の更地価格には大きく劣ってしまいます。つまり「借地権の値段+底地の値段 < 更地価格」です。結局、借地権と底地とに権利が分かれていることが、お互いの不幸なのです。 したがって、このふたつの権利を合体させるべきです。これが相続税対策として要請される借地の整理です。ただし現実にはこれは容易ではありません。だからこそ今日も、大量の借地関係が残されているのです。
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