時価を左右する個別的要因(3)接道義務
先に「住みよく災害にも強く」を目的とする行政法規を説明しました。そしてその最たるものがこの規定です。「建物を建築する敷地は、建築基準法に定める道路に2m以上接面していなければならない」(建築基準法43条)とする規定です。これを「敷地の接道義務」といいます。
すなわちここで定めている2つの要件を満たさない限り、その土地上の建物の建築は禁止されてしまうわけです(以下本書において、これにより建築を禁止された土地を「欠陥敷地」ということとします)。
要件のひとつは、敷地の間口が2m以上あること。もうひとつは、敷地が接面する道路は、建築基準法が認めたしっかりした道路(幅員は原則として4m)であることです。立法趣旨は災害対策(つまり火災等の場合の避難・救助の観点)が中心です。 ところで「欠陥敷地」は街のいたるところにあります。にもかかわらずこの強烈な制限規定の存在は、世にあまり知られていません。したがってこれに起因する不動産のトラブルも多数生じています。
「欠陥敷地」は、この規定の制定当時(昭和25年)にも相応に存在していたようです。しかしこの発生原因の大きなものは、全般的な地価高騰による土地の細分化にあります。これを先の図表4-2のB地や図表4-3のC地で考えます。
まずB地ではこの路地の幅が問題となります。つまり「間口2m以上」でなければならないからです。しかし図表4-6にみられるとおり1,8mしかないものが珍しくありません。昭和40年代半ばまでに分割されたものの大半が、尺貫法による1間(1.81m)で分割されているからです。
図表4-6: 間口が2mに満たない路地状敷地の路地部分
間口は約1.8mです。ここに車を入れればこすりそうな気がすることからもわかります。この土地は「欠陥敷地」なのです。
今度はC地における私道の問題です。この私道はそこで説明しましたように一定の基準をクリヤーした位置指定道路でなければなりません。しかし写真が示すように、昭和40年代頃までは位置指定道路の認定をいけないままの私道の造成が、一部で行われていました(むろん写真の奥の土地は「欠陥敷地」になります)。
さらに300坪といった広い自宅の敷地内に、長男夫婦や長女夫婦さらには貸家と、無計画に何軒も建てていっている土地を見かけます。この場合少なからぬ家屋の敷地が「欠陥敷地」になってしまいます。それやこれやで、「欠陥敷地」は街のあちこちにあるのです。
ところで「欠陥敷地」は単に「合法的に家が建てられないというだけ」という考え方があるのも事実です。現に「欠陥敷地」の大半に家が建っています。つまり「違反建築」で建てれば、建築はできてしまいます。そして世の中ではこれがある程度普通に行われています。ですからもちろんその値段がゼロというわけではありません。
では、一般の土地を100とした場合に、「欠陥敷地」の値段はいくらぐらいになるのでしょうか。いうまでもなくこうした「傷もの」の相場はガタッと落ちます。そこでこれを強引にエイヤッとやれば25~40といったところになりましょうか(この点は、買い主の立場でお考えいただければ、ご納得いただけでるでしょう)。要するに、「欠陥敷地」の時価は半値を大きく下回るのです。
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