民主党は19日、配偶者控除への所得制限につき、政府に対してその見送りの提言を行うこととした。
高額所得者に限って配偶者控除を適用させなくすることにより、その税負担を高めようとする案が検討されていた。しかし今回これを見送り方針としたわけだ。税制改正につき議論する作業部会の役員会での決定である。
新聞報道によると、見送りの理由として次の二点が示されている。
一点目は「所得制限をすると、所得を自ら調整する余地のある個人事業主と、そうでないサラリーマンとの間で不公平感が生じる」。その二点目は、「その制限所得の境目では、所得が少ないため控除を受けた人が、所得が多いため控除を受けられなかった人の手取額が上回るという「逆転現象」が生じる」というものである。
いやはや彼らのレベルの低いこと低いこと。まさに絶望的にならざるをえない。この改正に、そうしたマイナス面が生じるのは事実である。しかし後述するように、そんなものは微々たるもの。いわば「難癖」といった類のものにすぎない。
そもそも制度を改訂しようとすれば、どのような場合にも何らかのマイナス面が付随する。それでも改訂を行うかどうかは、プラス面との比較考量に決めるべきものである。果たして彼らは、そうしたまともな議論をやったのであろうか。
この際、それらがいかに「難癖」レベルであるかを説明しておこう。
その最大のものは、所得税では既にこうした所得制限が多数存在している点にある。そしてこれらの多くの規定も、これら2つの「欠点」を有している。しかし今までそれらが特に問題になったことはない。だから今回も問題になるはずがないのである。
また所得制限に該当しそうな高額所得を得ている個人事業主であれば、そのほとんどの配偶者は青色専従者の適用を受けている。そして青色専従者であれば配偶者控除の適用は受けられない。したがってこと配偶者控除に限っては、先の一点目の問題はほとんど生じない。
おそらく民主党の人たちは頭でっかちなばかりで、こうした税の現場はご存じないのであろう。しかしかりそめにも税を云々しようというのであれば、現場の人の意見を謙虚に聞く等により、もう少し勉強してからにしていただきたく思う。
(イヤ下手をすると、幹部役人と同じく高額所得者である彼らは、(幹部役人に吹き込まれる等により)自分たちが不利になるこの改正を葬ったのかもしれない。これはまあ考え過ぎということにしておくが)。
いや本稿の主題は、そんな「難癖」といった話ではない。ただでさえ大変な財政難の中にあって、民主党が「ばらまき」と批判されている政策を持ち出している。検討するべきは、そうした財源をどうすべきかにある。事実、「配偶者控除への所得制限導入」は、この増収分を子供手当の財源の一部にしようとしていたのである。
したがって本来なすべき論議は、高額所得者に税負担の追加を求めるべきかどうか、さらにはその具体策として「配偶者控除への年収制限導入」が妥当かどうかである。
そしてこうした点こそ、政権与党である民主党の議員が大所高所から検討・議論すべき内容である。
ちなみに私個人とすれば、これらには賛成する。とにかく今の財政状況はどうにもならない。にらみ合いばかりでは前に進まない。どこかが先頭を切らなければならない。そうした意味から、高額所得者のこの程度の負担増は、とりあえずリーズナブルと考えるからである。
にもかかわらず、彼ら民主党は選挙が怖いのであろう、税をばらまくことばかりを考える。その一方、増税方向については真剣に考えようともしないまま、愚にも付かない口実を持ち出して先送りをしてしまう。今回はその典型である。
さらには、「増税の前にやることがある」といわている。しかしこの本来の「やること」すら行おうとはしない。
もっとも「こうしたどうにもならない政治家を選んだのは、あなた方選挙民ではないか」と言われれば、そのとおりであろう。事実この私も、「民主党ならこのダメな政治や行政を変えてくれるはず」という、熱烈な1票を入れた口である。
だからこそそうした責任の一端を果たすべく、こうした辛口の「声援」を送っているともいえるのではあるが...。まあ絶望的ですね。