公道には長い獣道(ケモノミチ)でしかつながっていない無道路地。しかもその面積が1,000m²以上と広い。こんな土地はどうにもなりません。これを強引にいて評価すれば1~2割がやっと。しかしこれが相続財産に含まれていたのです。
そもそも面積の広い住宅地は、そのままでは誰も買ってくれません。住宅地に2億も3億も出せる人はいないからです。したがってこうした土地は開発事業者が、道路造成を伴う土地の細分化を行った上で、一般消費者が買うことのできる値段で売却されます。要するに面積の広い土地の単価はガタッと下がるのです。
これを反映して相続税評価としては珍しく、広大地の補正率としてほぼ45%といった大きな減額をします。そしてその補正率は接面道路の路線価を乗じるとされています。
一方、無道路地の相続税評価は、大雑把にいって至近の路線価をベースとしての4割引きです(本音を言えば8割引きぐらいにしてほしいのですが)。したがって、この土地は広大地と無道路地という2点から、その相続税評価額は本来33%(0.60×0.55)になるべきところです(それでも実際にはまだかなり高過ぎですが)。
ところが規定上そうはいきません。先のとおり広大地の補正率は接面道路の路線価に乗じて評価しなければなりません。しかしこの無道路地には接面道路がないのです。すると役所はいかにも「であれば、最も近い道路の路線価を使いなさい」と言いそうです。そして安全第一を旨とするほとんどの税理士もそうするでしょう。
しかしそれでは無道路地としての評価額が下がりません。常識的に考えて、何より不動産の専門家としての感覚からして、評価額は先の33%といった水準でなければなりません。
そこでこの土地の評価に際しては、詳細な理由書を付した上で、無道路地の減額として至近の路線価の4割引きを前面道路の路線価として、広大地の補正率を適用して(要するに33%評価です)申告しました。これで税額は軽く数百万円は違ってきます。
さて一見、当たり前のようにも思えますが、評価規定に定められていない評価減です。つい「こうしたやり方を嫌うであろう税務署が、何を言ってくるか分からない」などと考えてしまうのです。しかしその時はその時。めいっぱい反論するつもりです。
しかしこちらの言い分を認めたのでしょう。税務署は何も言ってきませんでした。