韓国の裁判所が、再審無罪判決を出すに際して涙で謝罪したという(12月12日付東京新聞)。ソウル中央地裁の崔東列(チェドンリョル)裁判長である。
本来は当然と思われるこの行為も、わが国の裁判所の実態を考えると、強い驚きを禁じ得ない。
判決文によると、この冤罪事件は韓国の諜報機関KCIAがでっち上げたもの。大阪生まれの金さんは、日本社会での差別に悩み70年代に韓国に渡った。そしてソウル大に通っていたところ、「北朝鮮のスパイ」としてKCIAに連行された。
令状なしの3週間の監禁における拷問により、スパイとして入国したと供述させられた。そしてこの調書のみを証拠として、彼は国家保安法違反罪により懲役10年の刑で服役したのである。
新聞はこう報道している。”崔裁判長は(中略)、36年前、無実を訴える金さんが拘置所の床で書いた82ページに上る陳述書の冒頭部分を「判決文に載せ、裁判所の教訓としたい」と述べて朗読し、涙で謝罪した。「裁判所と韓国国民を代表してお詫びします」”
なんとすばらしいことか。この感動的事実を前に、こちらの涙腺もゆるんでしまう。むろん韓国の裁判所が全てこのようであるとは思えない。
しかしこのような裁判官が一人でもいるということだけで、韓国が好きになってしまう。いや、まいりました。
はっきりしていることは、わが国にはこうした裁判官は皆無。全くのゼロなのである。裁判所に関しては、この国は韓国にボロ負けといわざるを得ない。
念のためわが国の状況をふり返っておこう。
先般のゴビンダさんの再審無罪確定に際しては、検察は謝罪のコメントを発表したものの、捜査や公判には問題なかったと強弁。裁判所に至っては謝罪のコメントすらなかった。
同じく再審無罪となった布川事件の櫻井さんはこう語っている。「冤罪の原因は警察、検察、裁判官にあるのに、判決はこれに触れず激しい怒りを感じる」
わが国では(先の韓国の金さん同様)、代用監獄をベースに人質司法が罷り通る。証拠開示も検察ペース。その挙げ句が「有罪率99.9%」である。
しかるに、こうした状況を糺し冤罪を撲滅しようとする意欲は、裁判所からは全く感じることができない。
他人の罪を厳しく罰する裁判官が、自分の犯罪的な行為には目をつぶる。そして社会常識を習得しえないまま、ペーパー試験の成績のみを根拠としてプライドの固まりと化す。
だから冤罪を出そうが何をしようが、「頭を下げる・反省する」といったことができない。
この無能かつ人間性の欠落したわが国の裁判官。彼らに韓国の崔裁判官の爪の垢を煎じて飲ませたいのである。