村木冤罪事件にからんで、大阪地検特捜部長らが10月1日に逮捕された。大阪地検の組織ぐるみをもありうる検察の底なしの疑惑とされている。
しかし私にいわせれば「何を今さら…」である。そんなもの組織ぐるみに決まっている。最高検以下の検察全体が「でっち上げ体質」にまみれているのである。

この事件に関してのそうした詳細は、既に本稿の「生ぬるい、江川紹子の村木事件の文春検察批判記事 その1,その2」で明らかにしている。
これを一言でいえば、「有罪率99.9%」(無罪主張事案でさえ無罪率は3%以下)に象徴されるように、捏造であろうが改竄であろうが、裁判所は検察の主張どおりにすべて有罪にしてくれる。だからやった者勝ち。検察は組織的に「でっち上げ体質」が蔓延しているのである。

ただし権力に擦り寄る大マスコミは、これらを一切報道しようとしない。したがって一般国民の大半はこうした事実に気付いていない。
その意味から未だに大マスコミは、ほとんどヤメ検(検察OB)だけに評論させる。となれば彼らは古巣を悪くいうわけがない。だから「大阪地検特捜部の一部の検事による許されざる行為」と、あくまで特殊事情に過ぎないなどと強調するわけである。

こうした中にあって、「何故・どのようにして、今回こうした腐敗ぶりが表沙汰になったのか?」。これが私の最大の疑問であった。
そしてその回答が、「小」マスコミである週間新潮誌(9月30日発売号)に、次のように掲載されたのである(「大」マスコミは、まずこうした内情は報道しない)。

そもそも主犯の検事は、無罪を示す証拠の改竄を村木氏の逮捕の前の段階で行っていた。このあまりにひどい改竄に気付いた同僚検事が、1月末頃にこれを上司に「内部告発」。その中には「潔癖症」といわれるまでのまじめな検事もいた。にもかかわらず上司はこれを放置。その上、主犯検事と対立した告発検事の側が特捜部から公判部に飛ばされる。

この捏造は大阪高検まで伝わっていたはずにもかかわらず、半年経っても主犯検事への処分はなされない。さすがにこれに怒った告発検事の周辺がこの件を朝日新聞にリーク。その結果、同紙のスクープ記事となったとのことである。

結局のところ、まず絶対に外部にもれるはずのないこうした話が、今回に限って大新聞にリークされたについては、次のような偶然が重なったためと考える。
まず捏造の時期が特に悪質であったこと。珍しい「潔癖症」的検事が同僚にいたこと。彼らの間に感情的な対立が生じたこと。これら全体に関して上司があまりに無神経であったこと。そして主犯検事の稚拙さに起因して無罪判決という検察の大黒星となったこと、等である。

このような経緯で情報を入手した以上、朝日新聞も今までのように「検察に貸しを作ることによりこれを握りつぶす」というわけにはいかない。ここまでの内容であれば、朝日がやらなければ他紙のどこかが書くに決まっているからだ。
したがって他紙も俄然追随し、大取材合戦となる。となれば検察は裏技を使うことができない。もはや世論には抗しきれない流れとなっている。ウソで塗り固められていた「検察の信頼」なるものが、大きく傾いてきたのである。

しかしあくまで権力の側に立とうとする大マスコミ(とりわけ記者クラブを介して検察に取り込まれている検察担当の記者)は、本気で検察の本質を突こうとはしない。ここで世論を制御することにより、権力側に貸しを作ろうとしているのであろう。
したがって検察批判も当初から腰が引けている。この期に及んでも、コメント・評論者はヤメ検が主であり、第三者であっても検察の実態をあまり知らない人に限っている。

しかし長年ずっと隠蔽されてきた検察の「でっち上げ体質」。滅多に起きないであろう今回の事件は、これを突き崩す千載一遇のチャンスとなっている。
そこで次回は、いかにすれば検察・司法を革命的に是正することができるのかについて論じていきたい。(つづく)