これが事実とすればすごい話である。9月30日の朝日新聞は、裏金を使い込んだ神奈川県庁の税務課員が、当時の上司二人から多額の換金後の金券を要求されたことを報じている。そしてこの職員 (一審有罪)は、この要求に応じて約300万円のタクシー券等を渡していたという。
まあどうにもならない公務員だが、話がすごいというのはこれからだ。(事情の説明を除き)記事は次の記載で終わっているのだ。「二人は既に退職しているが、県はこの額の返還を求めた。元上司二人は応じる意向だという」。
どうやら県は、これ以上は何もするつもりはないらしい。しかしこれは部下の横領を上司が見過ごし、その代わりに横領の分け前を要求して300万円もせしめるという卑劣極まる行為である。県はこれを「返還すればおとがめなし」にしようというのである。
元上司は県の調査に、「正規の手続きで手に入ったものだと思っていた。業務かその延長に使った」と釈明する。その上で「監督責任などの道義的責任から、返還する意志を示した」のだそうだ。
まったくのおふざけ。正規の手続きで何千万もの金権が手にはいるわけはないし、業務の延長に1人150万円も経費がかかるわけがない。卑劣な脅迫により大金を奪った上で、「道義的責任」が聞いてあきれる。
役所が身内に超甘の「還せばOK」というのであれば、多くの役人は「それなら俺も」と思うだろう。仮に発覚してもそれが退職後であれば、満額手にした退職金も影響なしという。
まさに県が、「しっかり裏金を作ってそれを使い込みなさい」といっているようなもの。これでは不正経理や横領が蔓延するわけである。
少なくとも県は、300万円の横領の被害者として二人を告訴しなければならない(それ以外にも多くの刑法等に違反しているはず)。そして司法当局は、二人を刑務所送りにするとともに、数千万円という退職金相当額の罰金を科すべきである。
ここで何より重要なのは、こうした「超甘」の方針を立てた県の幹部を大幅降格させることである。
まさに一罰百戒。この県の幹部へのこの必罰方針こそが、県職員の規律を大きく回復させる。さらにはそれが、この処分方針にみる公務員特有の「ぬるま湯体質」からの脱却を可能とさせると思うからである。
それにしても大新聞は、こんな腑抜けた役所の発表をよく黙って聞いているものだ。なぜそこで「なぜ県は二人を告訴しないのか」という質問をしないのか。読者の誰もがそう思うだろう。やはり記者クラブの馴れ合いとしか思えない。