東京新聞によると、地方税滞納者が自治体から厳しい徴集を受けることにより、生活の困窮や精神的な苦境等で追い詰められているケースが相次いでいるという。
確かに税は納付すべきもので、滞納は許されない。そして法律は、国や自治体に税の徴収のために自力執行権という強烈な権限を与えている。自治体独自の判断で、滞納者の財産の差押や強制換価を決定・実施することができるのだ(民間では裁判所の判決が必要)。
また一定の場合には、民間の抵当権に優先して徴収することも許されている。さらに破産宣告を受けても、租税債務は免責を受けることができない。
税は国や自治体の礎なるが故に、執行者にこうした絶大な権限を付与したわけである。
とはいえ滞納者とて税金は払いたい。事情があるから払えないのだ。こうした人から税を徴収するのは現実的に極めて難しい。本来債権回収の専門家あるはずの銀行ですら、この任務を放棄してしまったくらいである(債権回収会社にタダ同然の金額で譲渡)。
その点、国税当局は頑張っていると言っていいだろう。
彼らは先の絶大な権限を背景にしつつも、納税者の生活を破壊しないようにソフトに徴収していく。だから徴収ぶりが問題になった話は耳にしない。
実は税法には実質的な税の免除の規定がある。筆者は滞納者へのこの規定の適用を申請した。厳しい追求を受ける等やたら苦労をしたが、何とかOKを得た。
国税の徴収担当者は徴収一筋の人が多い。税収確保という張り詰めた空気の中、蓄積したノウハウに基づき臨機応変の対応をとっているのだ。
ところが市町村の税務担当者は全般的に緩い。決めらただけの事務をこなすというお役所仕事。勉強不足を含め、税への意欲が感じられない。だから国税のような迫力は無いに等しく少しも怖くない。
まして延滞者からの徴収といった困難な作業はまるでやってこなかった。経験のない彼らは、「やれ」と言われればマニュアル通りにやるしかない。だからいきなり「絶大な権原」の行使をはじめてしまう。預金への差押等(その前段階での脅し)である。さらには高率の延滞税までかけてくる。
子供の頃のチャンバラは、手加減しながらやったものである。木の棒といえども、まともに当たれば怪我をしてしまうからだ。ところが連中はこの手加減自体を知らない。
制限速度40㎞であっても、通常は60㎞程度では走っている。これをルールと称して警察が40㎞以上を全部取り締まったら、交通は破綻してしまうはずだ
実は総務省が、税収不足を背景に自治体のお尻を叩いている。その結果、徴収の担当者にはノルマが与えられ、その成果が人事に直結するという。となればいよいよ手加減知らずの荒っぽい徴収となる。
一方総務省はこれにより滞納残高が減少傾向となりご満悦らしい。
元来市町村は、生活保護をはじめ最低限の市民生活を守るべき立場にあるはずだ。その自治体職員が、杓子定規にルールを当てはめ住民の生活を破壊していく。
いやもっといえば、こうした法律は、適用する役所側がその意味するところを十分理解していること(つまり慎重に適用すべきこと)を前提に定められているはずである。
似たような話としては、奨学金滞納者への訴訟提起の急増がある。誰しもがそんな無茶はするまいと思っていた。ところが手の平を返すような、法を押し立てての滞納者への追い込み。まさに高利貸し顔負けである。
自分さえよければの中央と、機械的に法を当てはめるだけの徴収の現場。滞納者らの現実の苦しみに思いをいたそうとしない役人のあまりの無神経さを、怒りを込めて強く指摘しておきたい。