九州電力玄海原発の再稼働をめぐる「やらせメール」問題は、今日の「会社人間」のお粗末ぶりを遺憾なく示しているよ。ここまでくると、何かユーモラスにさえ思えてくるね。

まずいえるのは、九電のようなのほほんとした大企業は、出世した人ほどアホだということだね。
その典型は、記者会見でこの件を聞かれたとき、社長が「それは大きな問題なのか」と口走った点だよ。あまりにノーテンキ。社長の非常識ぶりを満天下にさらしちゃったね。

やらせメールを指示した担当副社長もひどいよ。こんなのを組織的にやったら必ず「たれ込み」が行われるよね。「実態が知れるとヤバイ」とは考えなかったのかしら。
まあ「少々のたれ込みなんか平気、九電の力がそれを押さえ込める」位に考えたんだろう。「同業等もみんな平気でやってるじゃないか」というわけだよ。

だけど今回は、「福島の大惨事を踏まえて将来の原発をどうするか」という、とんでもない課題に関するものだよ。そこら辺の世論調査とは訳がちがうんだ。
こんなナーバスかつ重大問題に大量の組織票を動員したら、世の総スカンを食らうだろうということが分からないのかね。リスク管理やコンプラ以前の、常識の問題だよ。

ついでにいえば、この指示を受けたであろう部長クラスの人は、なぜこれを止めようとしなかったんだろう。まあそのイエスマンぶりで部長まで出世できた、といえばそれまでだけどね。

この点に関して、副社長から指示を受けた佐賀支店長の発言は興味深いよ(20日の読売新聞)。
「やらせや捏造という意識はなかった。ただ今から思えば、意見の誘導とみられて当然の行為。弁解の余地はありません」、さらには「運転再開をしたいという焦りで視野が狭くなっていた」。企業体質についても「指揮命令系統がしっかりし、上から指示が出た場合、期待に応えるようやり過ぎる面がある」と言うんだ。

これはとりあえず本音の発言のように思うね。その意味からも、これは「九電の釈明・謝罪」としてかなりの高得点だと思うよ(高得点を狙っただけの発言かも)。  ただ頭の硬い上層部が、このレベルまでの謝罪を受け入れるかしら。これからの彼の立場が少し心配になるね。

さてこうした上からの指示により、賛否を逆転させるほど多くのやらせメールが発送されたわけだ。
そうした発信者の中には、「愛社精神の発露がなぜいけない。株主総会だって社員株主が動員されているじゃないか」なんていう人もいるんだそうだ。まあ「コチコチの会社人間」と称しておくよ。

ここで、「何としても原発を再稼働したい」と考える九電はどう対応するべきであったか、を少し考えてみるよ。
まず理想をいえば、協力会社を含む各社員が、上からの指示なしに自発的に原発支持のメール等を出してくれるような状況にしておくことだね。そもそも「愛社精神の発露」は、こうした阿吽の呼吸でやるものでしょうが。

とはいっても、現状はそこまでいっていないだろうね。であれば、絶対に外部に漏らさない人を厳選して、密かに口頭で「出せ」と命じることだよ。命じられた人は、「厳選された光栄」をベースに、そのほとんどが出すはずだからね。

この程度の発想すらできなかった上層部、さらには何にも考えないままこれを受け入れる社員。こんな連中によって構成されるこの会社が、いかにお粗末かって話なんだよ。
ちなみに九州の経済界は九電が牛耳っているというよ。考えてみれば、同じ低レベルの東電からも経団連会長を輩出しているね。情けない限りだよ。

今度はこの調査・説明会の主催者(県や経産省)を考えてみる。実は県の幹部にも、このやらせメールの指示文書の存在が伝わっていたというね。でも彼等は、時間の制約等を理由に何の手も打たなかったんだ。

役所という組織の人は、真実の追及といった使命感なんかないもんね。九電と事を構えるのは面倒だし、とにかく体裁さえ作ればいいといった考えなんだろうね。
だからこうした「やらせ」が、とんでもない悪影響をもたらすかもしれないという常識的な発想が出てこないんだ。

では主催者は本来どう行動するべきだったのか。このような場合には常識的に考えて、九電等が動かないはずはない位は考えるよ。そしてそれは具合が悪いよね。
となれば私ならこう言っただろうね。「今回の問題の特質に鑑み、意見表明等に関しては、九電関係者の方はご遠慮下さるようにお願いいたします」。

いずれにしても、このような「やらせメール」といった胡散臭さから、原発再稼働への途が大きく閉ざされようとしている。だけどはたしてこんな性急な脱原発の動きが、この国の経済・社会にとって本当にいい選択なのかどうなのか。

本来この大問題は、もう少し冷静に考える必要があったと思うよ。その意味から、妙な形でこの流れを作ってしまった「やらせメール」の関係者(役所を含む)の罪は、万死に当たると思うんだよ。