前章で路線価評価の規定をいろいろ紹介しました。そしてそこでは評価規定の不出来ぶりについて指摘し、またその点の批判もしました。しかし相続税の申告に当たっては、あくまでこの評価規定どおりに評価しなければなりません。したがってこの第1節では、「評価規定どおり」をいかに的確に実現するかを課題として述べていきます。

さて多くの人は、「遺産の評価も税額の計算方法も、すべてルールが決まっている。であれば誰がやっても同じ評価額、同じ税額になるはずではないか」と思われるかもしれません。

確かに、評価規定を熟知しているとともに不動産実務にも長けている場合には、しっかりした判断の下に妥当な「評価規定どおり」の評価が可能となります。

しかし前章で詳しくみたとおり、相続財産の大部分を占める土地に関しての評価規定は、そう厳密にできているわけではありません。考えようによっては評価方法にはかなり幅があるのです。