国の考える時価は現実離れの高値

借地権・底地における長期対策と短期対策/貧乏神とも言うべき崖地/筆者体験・崖地処分のウルトラC

借地権・底地

前章で借地権と底地について説明しました。そこでの結論は、「借地権の値段+底地の値段 < 更地価格」です。

しかし相続税評価では、「借地権の値段+底地の値段=更地価格」を前提に評価しています。仮に借地権割合が6割とします。では更地価格が1億円である場合に、その底地がその4割の4,000万円で売れるでしょうか。むろん底地などまともな値で買う人はいません。強いて売ろうとすれば、底地買いの事業者に1,000万円強の値で売ることになりましょう。

確かに借地権者が買う場合であれば、4,000万円の値が付く可能性は十分あります。しかしその評価が妥当とされるのは、相続開始の時点の時点で借地権者が購入意向を示している場合に限ります。通常そのようなことはありません。この評価はナンセンスなのです。

崖地

崖地の時価は、そのほとんどがゼロ(むしろマイナス)であることは先に述べたとおりです。

しかし評価規定では、図表5-10のような崖地補正率が適用される。驚くべきことには、9割以上というほとんどが崖地というどうにもならない土地の評価額が、最も低い北向きのものでわずか 47%減。これが日当たりのよい南向きでは3割減にしかなりません。当局はこの点の理由を「崖地は通常利用できないとしても、採光・通風等宅地の環境上貢献しているから」というのです。まったくもって霞ヶ関の「お利口さん」の屁理屈にはかないません。

図表5-10: 崖地補正率表

ごちゃごちゃと書かれた表ですが、最下段をご覧下さい。要するに、9割以上が崖地であっても南向きが0.65(35%引き)、北向きが0.53(47%引き)という、きわめて非現実的な評価を表しています。

崖地面積・総地積/崖地の方位 西
0.10m以上 0.95 0.94 0.96 0.93
0.20m以上 0.91 0.90 0.92 0.88
0.30m以上 0.87 0.86 0.88 0.83
0.40m以上 0.84 0.82 0.85 0.78
0.50m以上 0.81 0.78 0.82 0.73
0.60m以上 0.77 0.74 0.79 0.68
0.70m以上 0.74 0.70 0.76 0.63
0.80m以上 0.70 0.66 0.73 0.58
0.90m以上 0.65 0.60 0.70 0.53