「間口の狭さの不利を補う」ためのはずだが・・・・・・
前座・大雑把評価/真打ち登場・接道義務規定/「足りない土地はお買いなさい」/「高く評価しますが、物納は受け取りません」・・・無道路地/無道路地の始末のつけ方
間口が狭い土地は使い勝手が悪く、その市場価格も劣ります。これを評価額に反映させるべく、図表5-6の間口狭小補正率が定められています。
図表5-6: 間口狭小補正率表
間口が狭い土地は使い勝手が悪いため、狭くなるほど評価が低くなります。4~5mと狭い間口でも、商店ならそれなりにやっていけるので、商業系の土地の減価率は少なめになっています。※地区区分にはほかに、「ビル街地区」「高度商業地区」「繁華街地区」がありますが、ここでは割愛します。
間口距離/地区区分 | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 | 中小工場地区・大工場地区 |
---|---|---|---|
4m未満 | 0.90 | 0.90 | 0.80 |
4m以上6m未満 | 0.97 | 0.94 | 0.85 |
6m以上8m未満 | 1.00 | 0.97 | 0.90 |
8m以上10m未満 | 1.00 | 1.00 | 0.95 |
10m以上16m未満 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
16m以上24m未満 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
24m以上 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
しかし一見して思うのは、どんなに間口が狭くとも補正率は90%(普通住宅地区の場合、この項で以下同じ)というわずか1割減。これも論外の「怠慢評価」です。
同時に4m未満は同じ減額率、という大雑把ぶりもかなりのものです。間口が1m程度というやっと人が通れる幅と、大型自動車が余裕で通れる(駐車場も楽勝)4m近い間口の土地が同じ価値だというのです。この大雑把ぶりは、4m以上の区分についてもの同様です。
間口の広・狭は土地単価に決定的な影響をあたえます。間口の区分が2mごとなどお話になりません。せめて50・程度で区切ってほしいものです。正しいままでの話は前座に過ぎません。
間口狭小補正率の矛盾の真打ちは、間口2mに区分がない点です。前章で述べたとおり、間口が2mに満たなければ、接道義務の規定によりこの土地には建物を建てることはできません。その結果この土地は一気に半値を大きく下回ってしまいます。
しかし繰り返しますが、現行の間口狭小補正率「間口4m未満は一律1割減」のまま。要するに国税当局は、建築基準法のイロハ、かつ最重要規定である接道義務の規定をご存じないのです。
その後平成11年に、筆者が提訴したある争訟をきっかけに、接道義務規定をカバーするための妙な改正がなされました。これを図表5-7で、間口が1.8mの路地状敷地であるA地を題材に説明します。
図表5-7: 不足土地控除方式:間口狭小のケース
筆者が「欠陥敷地」が考慮されていないことを裁判で主張したところ、当局は急遽、図の斜線部分である2m2分の評価額を減額するとともに、評価通達に「不足土地控除方式」を定めました。これにより筆者側は一審敗訴。二審では逆転勝訴となりましたが、当局は「この敗訴には普遍性はない」として、不足土地控除方式は変更しませんでした。
つまりこの土地は間口が20・、面積にして2・不足しています。そこで評価に際しては、まずこの2・がある(つまり接道義務は充足している)前提でこの土地を評価します。そしてその評価額からこの2・分の評価額を差し引くことにより評価する(以下これを(不足土地控除方式)といいます)というものです。
さらに当局は、このまるでお話にならない不足土地控除方式を、無道路地にも広げました。つまり同じ改正により、図表5-8のB地といった無道路地の場合、まず接道義務を充足する2mの路地があると仮定し、この路地状敷地を評価した後に、不足土地である路地部分を差し引くこととしたのです。
図表5-8: 不足土地控除方式:無道路地のケース
市場価格は1~2割程度と思われる土地です。しかし評価は、不足土地である路地部分があると仮定した通常の路地状敷地から不足土地部分だけを控除するのみです。なお、無道路地が道路とかなり離れると、控除すべき不足土地の額は大きくなります。そこで、評価規定はご丁寧にも不足土地の最大の減額幅を40%に制限しています。
このような評価方法では、半値を大きく下回る「欠陥敷地」の実態が全く反映されません。さらに誰も買い手はいないであろう無道路地(時価は8~9割減?)も、この不足土地控除方式により半値以上で評価されてしまいます。これではどうにもなりません。