死亡から10ヶ月以内に納税者自身が税額を申告
死亡から10ヶ月以内に申告して納税する/遺産の額の測定がカギ/財産評価基本通達とその限界/評価規定は大雑把で矛盾だらけ!
相続税は申告納税方式を採用しています。したがって、納税者自身が「いくらの遺産があったから、相続税額はこの金額になります」という申告書を税務署に提出しなければなりません。この申告期限は、原則として相続開始の10ヶ月後です。
一方固定資産税は、賦課課税方式といって役所が一方的に税を賦課します。つまり役所は「あなたの所有不動産の評価額はこれこれだから、この金額を納付してください」という納付通知書を送達してきます。納税者はこれを払っていればいいわけです。
しかし相続税は、自分で申告書を作成しなければなりません。とはいえ一般の人がこのような作業はまずできません。だから税理士に頼むわけです。実は所得税、法人税さらには消費税といった主な税はすべて申告納税方式です。ですから税理士という商売が成り立つわけです。
さて相続税は、被相続人が遺した遺産の大きさによって、納付の義務の有無や税額の大小が決まります。となれば遺産の額をきっちり測定しなければなりません。この測定の基準に関して、相続税法は「時価で評価せよ」と定めています。これが一番公平だからでしょう。
しかし気安く「時価」などといっても、話はそう単純ではありません。預金や上場株式のように金額が明瞭なものであれば簡単でしょうが、土地の場合にはそうはいきません。
たとえば駅前の業者さんは「坪100万円は固い」といいます。大手の不動産会社は「いや110万でもいける」。鑑定士の先生は「85万円がやっと」……。これではどうにもなりません。
そこで国税庁は、すべての財産について「財産評価基本通達」という評価規定(土地は路線価評価方式)を定めました。そしてこの評価通達の規定どおりに評価していれば、その評価額は相続税法の定めている「時価」であるとみなすこととしたのです。
とはいえ問題はその評価規定の正確性です。現実の土地は面積や地形、接面道路といった多くの個別性を抱えています。これらを適格に評価しないと正確性は確保されません。しかし正確性を追求すると、評価規定がやたら複雑になります。
結局国税局は、評価の正確性はあきらめることとしました。「10ヶ月以内の申告が可能」を最優先した極めて簡便(つまり大雑把、もっというと杜撰)な評価規定としたのです。
この評価規定には、これに止まらない多くの矛盾を抱えています。その結果この評価額が、法が定めている「時価」を超えることもそう珍しいことではありません。さらに不動産が不得手な一般の税理士が、必ずしもこれをうまく使いこなせていないという問題もあります。
税額の多寡に直接的な影響を与える評価規定。これを巡るこれら多くの問題が本サイトのメインテーマなのです。