基本となる「標準的な土地」は優良物件

個別具体的な土地の評価は2段階で/「標準的な土地」の実態は優良物件/大地主の土地ほど個性的である/納税者も勉強する必要がある

 今度は地形を題材とする事例を考えてみましょう。図表4-1をご覧下さい。左側の標準的なC地の単価を100とした場合に、やや変形のD地の単価をいくらと考えるかという話です。

図表4-1: 不整形地の値段

C地の単価を100として場合、買い主であるあなたはD地にいくらの値を付けますか。

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ここは先に述べたことの実践あるのみです。すなわち「まず自分が買い主だったらいくらで買うか」。次に「こうした変形の土地をさほど嫌わない人は、いくらまで出すだろうか」を考えるわけです。すると、最終結論は60~65といったところとなりましょう。

さて個別具体的な土地の評価には、必ず2つの手順を踏む必要があります。最初はその土地周辺の地価水準を把握することです。つまり「今あの辺りは坪100万円ぐらいではないか」といった内容です。

ここで留意すべきは、この「坪100万円」は、特に長所も欠点もないその地域の「標準的な土地」を前提にしているという点です。これを一般の住宅地でいえば、道路幅員4mの公道に接面する整形の40~50坪の更地ということになりましょう。要するに図表4-1でみたC地です。

ところでD地のように、個々の土地は地形や面積、接面道路の状況等々、土地の個別的にいろいろの特徴を有している場合が大半です。したがって2番目の手順として、標準的な土地を前提とした地価水準(単価)に、こうした個別的要因を加減算する必要があるわけです。

以上から、この2つの手順を算式風に示すとこうなります。

その土地の評価額 = 地域の地価水準 ± 個別的要因

たとえていうと「あの辺りは坪100万円ぐらいだが、地形が今ひとつだからこの土地の単価は坪80万円ぐらい」というわけです。

しかしこの「標準的な土地」というのは大変なくせ者で油断がなりません。つまり「標準的な土地」というと、つい平均的な土地と考えてしまいますが、実はこれは相対的には優良な土地なのです。つまり算式の「±個別的要因」における+の要因は角地等ほんの少ししかありません(増額幅もわずかなものです)が、-という減価要因は数も多いし減額幅も極めて大きくなりやすいのです。

それでも一般サラリーマン層が購入した分譲地や建売り住宅等なら、その多くが「標準的な土地」となっています。分譲主が高く売れるようにそう作ったからです。しかしそうした人にとって相続税は無縁の存在です。

ところが多額の相続税が課される大地主の所有する土地には、「標準的な土地」などほとんどありません。まず面積はかなり広く、地形もよくありません。また貸家の敷地であったり借地権が付いていたりします。

土地の評価は、これらの減額要因をいかに的確に評価額に反映するかが勝負です。そして次章で詳しくみるとおり、相続税評価の最大の欠点はこの個別的な減価要因を現実離れに過小評価する点です(先のD地の評価額は90見当)。だから土地の評価額が不当に高く評価されてしまうのです。